映画『モバイルハウスのつくりかた』 

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制作日誌
「モバイルハウスのつくりかた」のつくりかた
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2011年2月16日
この日は坂口さんが持っていたソーラーパネルを設置する。そう、このモバイルハウスはエネルギーフリーの家でもあるのだ。このやり方も坂口さんは隅田川の路上生活者から学んだことでもある。屋根を透明なものにしたことで、ソーラーパネルを室内に設置することになった。ロビンソンさん曰く、ロスはほとんどない、とのこと。(ちなみに、ロビンソンさんは、かつてカラーコンピューターを製造する会社の社長でもあったのだ。)一部、塗り残していた部分を白く塗って、モバイルハウスはほぼ完成。

2011年2月8日
坂口さんは朝まで渋谷で飲んでいたそうで、この日早朝モバイルハウスに来て、初めて泊ったそうだ。寝心地は快適とのこと。二日酔いでフラフラになりながら、ペンキを塗る作業を続行。一部分を残してペンキ塗りの作業終了。その間、ロビンソンさんはモバイルハウス内の電気系統の配線工事を行う。拾ってきたバッテリーに、同じく拾ってきた電灯2つを取り付ける。見た目はちょっとしょぼいかもしれないが、2畳半の室内には無理をしていない感じがどこかしっくりくる。

2011年2月7日
モバイルハウスを白く塗る。防水の意味もあるが、これから駐車場を借りる交渉をするにあたって少しでも見栄えをよくするためでもある。白く塗る、と聞いた時点で、僕はPHスタジオが好んで作っていた真っ白の家型のいくつもの作品のことがふと頭をよぎっていた。ひたすらペンキを塗っていく作業だが、最初、むらが出て困っていた坂口さんだが、徐々にコツを覚え、むらもなく早く塗れるようになっていった。やっぱり自分でやってみないと分からないことはたくさんある。全部は塗れず、少し作業を残す。

2011年1月20日
久しぶりにDOMMUNEにて、「都市型狩猟採集生活⑤」。ゲストは建築家の藤村龍至さん。坂口さんと同世代の若手建築家だが、坂口さんとタイプも考え方もおよそ異なっているが、建築家の役割や社会との関係など、根本的な部分でどこか共通している部分がある。この日、初めて、製作中のモバイルハウスの考え方と写真が紹介された。藤村さんは都市計画の必要性を田中角栄の列島改造論から解き起こし、どういう都市がありうるのか語る。ご自身の体験のベースに、育ったニュータウンがあることを知り、世代は違うもののニュータウン育ちの自分としても親近感を覚えた。

2011年1月16日
外形としてはほぼ最後の作業となる、扉の製作。前方の屋根の角材につっかえてうまく閉まらない状態だったが、角材を切ったりしながら、なんとか閉まる状態に。扉の取っ手もロビンソンさんが拾って来たもの。これでひとまずの完成


2011年1月15日
しばらくモバイルハウスの製作は間が空いたが、年が明けて再開。この日はNHKの取材も入っていて、正直、撮影はやりづらかった。作業はまず、窓や屋根の隙間をシリコン等で埋めていく。防水対策まで気を使っている。次にベッドの製作。以前、雑談で坂口さんがベッドが折りたためると広くなっていいのになぁ、と言っていたことをロビンソンさんはちゃんと覚えていて、折りたためるアイディアを出してくれた。丁番を使ってベッドを壁側に収納出来るようにする。この方法に坂口さんも少し興奮気味。バッドの枠、板、足などを作って上げ下ろしをしてみると、2畳半の狭い空間がかなり広く使えることが分かる。ロビンソンさんも満足しているようだった。

2010年11月30日
モバイルハウスの前面に丸窓を付ける。イメージは茶室とノーチラス号だそうだ。坂口さんの無理難題(?)をさらっと解決してしまう船越さん。丸窓でさらにかわいい感じに。次に室内での作業机製作。同時に机前に窓を開ける。窓ガラスやレールはロビンソンさんが拾って来たもの。窓がつくとがぜん家らしく見えてくるから不思議だ。

2010年11月28日
今日は外壁のべニアを張る作業。前回少し苦労した分、壁はスムーズに進んだように思う。隙間などがあったら、雨が入ってきてしまうことになるから。そして、いよいよ車輪の取り付け作業。車輪を付けるための金具までロビンソンさんが自家製で用意していた。ロビンソンさんも楽しんで作業をしているようだし、坂口さんに技術を伝えることにも喜びを感じているように思った。モバイルハウスを少し持ち上げて、車輪を付けて見ると、これがなんともかわいらしい、どこかユーモラスな姿になった。これが坂口さんの真骨頂だと思う。考えていることは根源的なことなのだけど、常にユーモアを忘れない。実際に少し動かしてみると、確かに動いた。

2010年11月21日
骨格はほぼ出来たので、モバイルハウスの後ろ側の屋根と床を張る作業。それにしても、作業工具を次々に出してくるロビンソンさんは本当にすごい。床を張る作業では、ほんのわずかな狂いが致命傷となりかねないので、何度かやり直しが続く。1ミリ単位の誤差も許さないロビンソンさんの厳しさ。(船越さんは耐久性をちゃんと考えていて、いい加減な仕事が許せないのだ。)床を張り終わると、とても居心地がいいモバイルハウスの形が見えてきた。

2010年11月19日
多摩川河川敷の風景やロビンソンさん宅の様子を一人で撮影。

2010年11月16日
実際にモバイルハウスを建てる前に、作業場所の整地から。邪魔なものをどかし、地面の凸凹を均していく。角材を出して実際に地面に置いてみると、少し大きいという話になり、予定より縮めることに。こうやって身の丈を基準に柔軟に変化していくのも面白い。ロビンソンさんが使っている発電機からケーブルを引っ張り電動のこぎりで材料を切っていく。いきなりのこぎりで切ろうとしていた坂口さんを叱るロビンソンさん。二人のやりとりを撮影していて、この映画がどういう映画なのかやっと分かった。坂口さんのドキュメンタリーではあるのだが、同時に、坂口さんが路上生活の達人・ロビンソンさんに弟子入りする映画だったのだ。僕の中で勝手に浮かんだ連想は『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』だった。ルーク・スカイウォーカー=坂口さん、ヨーダ=ロビンソンさん、というわけだ。草木が生い茂った、多摩川の河川敷も惑星ダゴバっぽいかもしれない。材料を切り、ビスで留めていく作業の中で、所々、ロビンソンさんの「指導」が入る。ここを重点的に撮ろうと思った。やがてモバイルハウスの骨格が見えてくる。僕はなんだかとてもすがすがしい気持ちになっていた。今までトークショーをいっぱい撮りつつも、どう映画にすればいいのか悩んでいたが、この日、映画になる、という確信を持った。撮影後は事務所に戻り、データを全てパソコン+Blu-ray(予備用)に入れる。以後、全ての撮影で同じ作業を繰り返す。今までテープで撮影し、編集までそれっきりにしていたことを思えば、逆に面倒くさい。が、データ消失の恐れを考えればしょうがない。(つくづくドキュメンタリーには向かない方式だな、と思う。)

2010年11月15日
いよいよこの日からモバイルハウスの製作がスタートする。それまで数度、月刊誌すばるでの坂口さんの連載「モバイルハウスのつくりかた」では、製作にたどりつくまでの試行錯誤が書かれていたが、その部分は撮影できなかった。特に問題となったのは、どこで製作し、材料はどうするか、ということだった。初めは、モバイルハウスを置く駐車場で製作することも考えられていたが、物理的に難しいだろうということになり、最終的に多摩川の河川敷(より具体的にはロビンソンさん宅前)で製作することになった。また、材料は当初廃材を使う考えもあったが、誰でも実践できる方法という意味もあって、全てホームセンターで買うことになった。この日、坂口さんは完全フリーハンドで製作図面を書いていた。それを元にロビンソンさんと製作手順を相談。当初、2階建てにするプランだったが、駐車場に置くと風で倒れるぞ、というロビンソンさんのアドバイスで2階建ては断念。同時に、屋根の形状も変えた。車輪の付け方もひとしきり議論。大まかな方向性が見えた段階で、近くのホームセンターに材料を買いに行く。当初予定していなかった、屋根を透明にすることになった。角材、板、金具、車輪など買って、材料費合計26,000円也。安い。トラックで材料を運んでこの日の作業は終了。

2010年10月31日
自由大学「0円ハウス学」3時間目。今日は“多摩川のロビンソンクルーソー”さんが加わる。僕はこの日初めて船越さんにお会いした。今まで坂口さんの本や語りでロビンソンさんの生活を聞いてきたが、本人から語られる話はやはり新鮮だった。特にロビンソンさんの仙人のような飄々とした風貌と静かだが自信に満ちた口調はとても魅力的だった。それにしても、ロビンソンさんの生活から僕らが学ぶべきことはいっぱいある。講義終了後、受講生たちと懇親会。

2010年10月30日
自由大学にて2日間、坂口さんの「0円ハウス学」が開催された。1時間目は、黒崎さんからの質問もあって、坂口さん自身がどうサヴァイヴしてきたのか、という話になり、バイト生活、写真集の出版、画の販売など猛烈な勢いで語っていた。2時間目は鈴木正三さんも加わり、鈴木さんの生活が紹介される。

2010年10月17日
ワタリウム美術館の“アート1日小学校”にて坂口さんのワークショップ「0円ハウスを作ろう」を撮影。NEX-VG10を初めて本撮影で使う。ズームやら、ピンとやら、絞りやらまごつくことばかりで、四苦八苦。撮った映像を見れば、音がゴボゴボいっていて、問題があることが分かった。ワークショップは、鈴木正三さんも特別講師。初め、「家を作りましょう」という坂口さんの呼びかけにきょとんとしていた子供たちも、のこぎりを持って木を切り、カナヅチを持って釘を打てば見る見る生き生きしてくる。小さな小屋が完成した時にはみんな興奮していた。自分で家を作るとやっぱり人は楽しいんだと思う。

2010年10月12日
この日、新しいカメラSONY NEX-VG10を買った。約15万円。今までトークショーを中心にHDR-HC9で撮ってきていたが、坂口さんがいよいよモバイルハウスの製作に向けて本格的に動き出している中で、もっとしっかりしたカメラで撮らなければ、とずっと考えていた。たまたま夏頃、岡山県の映像に詳しい友人と話をしていた時に、一眼レフカメラの動画機能の話になった。この時、この機能をビデオ用に拡大すれば面白いのに、と言われていたら、その直後、そんなカメラが発売される、という情報が飛び込んできた。それが、NEX-VG10だった。僕は近年作られたハイビジョンで撮られたドキュメンタリー映画の画質に不満があった。それまでのSD画像に比べれば圧倒的にきれいにはなった。だが、そのせいで隅々まで映像情報がくっきりしたことによって、大きな画面で見た場合、とても目が疲れる、と感じていた。VG10では、Exmor(エクスモア)という、大きなセンサーを採用しているので、ボケ味を生かした撮影が出来ることが売りになっていた。ショールームで実物を操作してみたり、講習会に行ってみたりしてその性能を吟味してみた。画像に関しては僕の期待に答えてくれそうだったのだが、一番のネックは、電動ズームがついておらず、手動ズームだったこと。そのズームもかなり硬く感じ、ドキュメンタリーの撮影には向いていない、とも思った。けれども、あまり迷っている時間もないので、ここはこれで挑戦してみよう、と思い、思い切ってNEX-VG10を買った。また、本機はSDカード収録なので、初めてのことでもあるので、しばらく何度もカメラテストを繰り返した。

2010年9月26日
清澄白川のSNACにて、「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」出版記念トークショー&上映「来るべき貧困芸術と都市型狩猟採集生活のポテンシャル」が開催される。ゲストは批評家の杉田俊介さん。「ゼロから~」はオルタナティブな自己啓発書のようだ、という杉田さんの発言が新鮮だった。後半、再び『多摩川文明』上映。

2010年9月23日
川口市のメディアセブンにてブラウジングトークセッションの一環で坂口さんのトークショーが開催された。観客の年齢層が幅広かったせいか、この日の坂口さんは比較的落ち着いて話をしていたように思う。今まで何度か聞いたが、子供の時からの歩み・考えを自伝的に語っていく。

2010年8月31日
「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」刊行記念として、三省堂書店神保町本店で坂口さんのトークショー&サイン会が開催される。ゲストは建築家の隈研吾さん。さすがに大御所との対談とあって、最初、坂口さんも緊張していたように思うが、様々な建築家の話になるとかなり突っ込んだ話が盛り上がった。普段、あまり固有名詞の建築家のことを話さない坂口さんだが、この日は違った。路上生活者の家について隈さんが「ただの御目こぼしではいけない」と語られたことに対して、坂口さんが「合法的にやるためにモバイルハウスを作る」と返答していた。

2010年8月21日
HITSPAPERが主催NIT Tokyo Vol7で「21世紀型捨拾革命」と題して、坂口さんと小山泰介さん(写真家)、谷尻誠さん(建築家)のトークショーが行われた。まずは各々がご自身の活動をプレゼン。その後対談となったが、久しぶりに同世代の方との対談ということもあってか、坂口さんもリラックスして話していたように思う。

2010年8月18日
DOMMUNEにて「都市型狩猟採集生活④」。この日のゲストは、“隅田川のエジソン”こと鈴木正三さん。本当に0円で家を建てていた鈴木さんに衝撃を受けた話から、家の建て方、住まい方まで面白い話が続出。後半は先日撮影した『多摩川文明』の上映。ジ・エンドの『地獄の黙示録』バージョンが強烈!

2010年8月16日
坂口さんの監督作品『多摩川文明』の撮影現場を撮影させてもらうために、六郷土手に行く。この日、初めて六郷土手に行った。坂口さんとの待ち合わせがうまくいかず、1時間ほど多摩川の河川敷を歩き回る。とにかく熱い。やっと坂口さんと合流。何軒か路上生活者の家を訪ねる。するっと人の懐に入る坂口さんの妙技を見た思い。

2010年7月30日
坂口さんが梅山さん(当時、太田出版)から初めて「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」を受け取るシーンを撮影。さすがに坂口さんも高揚しているように思えた。その後、void+に行って、ペドロ・コスタのヴィデオインスタレーション展のオープニングに参加。坂口さんとペドロ・コスタの奇跡のような2ショット。その後、さらにシネマ・ロサの「録音映画祭」に行って、前野健太、磯部涼、山本タカアキのトークショーを聞く。

2010年7月13日
DOMMUNEにて「都市型狩猟採集生活③」。この日のゲストは、解剖学者の養老孟司さん。少し前の街の風景から、都市の問題、解剖学の起源まで軽やかに話がはずむ。

2010年6月26日
リトルモア地下にて「UNIVERSITY Vol001」。今回は坂口さんの単独トーク。のはずが、体調不良のせいもあって、坂口さんはほとんど何も話せない状態に。観客の前で泣いて謝る坂口さんを始めて見た。

2010年6月16日
DOMMUNEにて「都市型狩猟採集生活②」。この日のゲストは思想家の中沢新一さん。前回の最後で、アポもとっていないのに「ゲストは中沢新一さんで」と言っていたことが本当に実現してしまった。坂口さんは以前から中沢新一さんのファンだったようで、中沢さんの著作を巡ってもかなり面白い話になった。最後の方で土地所有の話になり、中沢さんからシルビオ・ゲゼルの話が出る。最後に中沢さんから「子供の質問は大切だ」と坂口さんにエール。

2010年5月23日
リトルモア地下で坂口さんが始めた「知の学校」“UNIVERSITY”の撮影に行く。ゲストは思想家の佐々木中さん。のっけから佐々木さんはUNIVERSITYの意味を語り、Bボーイ系の口調で思想を語っていく。圧巻。満席、熱気。2時間の予定が4時間の大長編に。坂口さんは押され気味ではあった。


2010年5月7日
パソコンを買い替えてスペックを上げる。これでやっとハイビジョンの編集が出来る。先行投資約50万円。

2010年4月11日
水戸芸術館の「リフレクションー映像が見せる”もうひとつの世界”」展に行く。坂口さんのレクチャーを撮影。坂口さんはどうも風邪をひいていたみたいで、ちょっと元気がなかった。

2010年4月4日
この日初めてDOMMUNEに行った。言わずと知れたライブストリーミングスタジオ。坂口さんが夏に出版する「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」に合わせて、この日から「都市型狩猟採集生活」という番組がスタートする。主宰の宇川直宏さんに撮影許可をいただいて、2時間のトーク(司会:磯部涼)を撮影。坂口さんは子供のころの話、大学在学中の話、路上生活者の家に注目していった話など縦横無尽に語りまくる。ラストに1曲歌を披露。これが恒例になる。

2010年4月3日
世田谷の自由大学で、坂口さんのプレゼンを撮影。今後開講する講座へのプレゼン。坂口さんの講座は「革命学」と「O円ハウス学」。とても熱いプレゼンで、投票で見事一位に。

2010年3月22日
夢の島マリーナに行く。「BO菜 ボートと野菜が東京を救う」(主催;東京文化発信プロジェクト室、ボート・ピープル・アソシエイション)の中で、坂口さんが「災害時に役に立つ0円ハウスのつくり方」というワークショップをするので、急遽、撮影をさせてもらうことになった。実質、この撮影がクランクインとなる。この日初めて、“隅田川のエジソン”こと鈴木正三さんに会う。ワークショップでは、坂口さんが多摩川で集めてきた廃材を、鈴木さんと相談しながら小さな小屋を作っていった。参加者の方々も楽しそうだった。この時、1年後、リアルな話になるとは夢にも思っていなかった…。

2009年10月30日
前作『船、山にのぼる』DVD販売開始。

2009年7月3日
ビデオカメラを買う。ソニーのHDR-HC9という、民生機。約9万円。今回の作品はハイビジョンにしなければ、という思いでどういうカメラを買うか検討していたのだが、まだ撮影が出来るか分からないので、業務機には手が出ず、また、今や家電量販店の主流になったAVCHDカード方式のカメラを使うのは怖く、消去法的に上記のカメラにした。しばし、試し撮りを繰り返す。しかし、坂口さんの銀座4丁目の企画は進まず。

2009年7月3日
初めて坂口恭平さんに会う。少し前に出版された坂口さんの著作「TOKYO一坪遺産相」がとても面白かった。東京に存在する、極小建築をルポした本。著者のことが気になってネットを調べていたら、著者のホームページを発見。そこの日記を遡って読んでいると、銀座4丁目に所有者不明の土地があって、そこに家を建ててやろう、という計画があることを知った。僕の中で何かがスパークした。僕は2003年に『ニュータウン物語』という、自分が育った岡山県のニュータウンを描いたドキュメンタリー映画を作っている。この映画を作る際に、日本の住宅政策についても調べたのだが、戦後の持ち家政策に対して疑問を持っていた。が、映画の中ではニュータウンを肯定したいという気持ちが強かったので、この疑問は封印していた。また、近年の格差社会の進行で、若い世代はとても家を持つことなど出来ず、ひどい場合にはアパートすら追い出される事例が増えている話を聞き、もっと家のことを考えないといけない、とも思っていた。だから、坂口さんの試みはとても新鮮で面白く画期的だと思ったのだ。喫茶店でお会いして、自分が今までやってきたこと、興味があることをお話しし、どうなるか分からないが、撮影させてほしい、というお願いをした。